【エスキュービズム 冷蔵庫】えっ、CDプレーヤーが売れている? エスキュービズムの戦略が面白い

2017-12-13 09:30:01


 ポータブルタイプのCDプレーヤー市場がちょっと面白いことになっている。

 「えっ、CDプレーヤー? いまさらなに言ってるの。オワコンでしょ」と思われたかもしれないが、家電製品を製造・販売しているエスキュービズムのCDプレーヤー(4980円、税別)が売れているのだ。2014年に販売したところ、5000台が2カ月で完売。翌15年には7000台、16年は3万台、17年も3万台を超える勢いで売れているのだ。6色のCDプレーヤーを発売! CDプレーヤーの1号機(16万8000円)が登場したのは1982年のこと。500円硬貨が発行された年にソニーが発売したところ、たちまち話題に。その後、多くの家電メーカーが相次いで参入したこともあって、あっという間に飽和状態に陥る。オーディオ不況も重なってなかなか大ヒットにはつながらなかったが、2年後の84年にポータブルタイプのCDプレーヤーを投入。持ち運びができるプレーヤーは売れに売れ、市場はどんどん膨らんでいく。

 国内の出荷台数(ポータブルタイプのみ)は98年に225万台を超え、2001年には259万台に達した。しかし、その年をピークに急減する。何があったのか。当時のアップルコンピュータ(現在:アップル)がiPodを投入したのだ。「最高1000曲をポケットに入れて持ち運べる」ことがウケにウケ、大ヒット。05年にiPod miniが誕生したときには、CDプレーヤーは80万台まで落ち込んでいたのだ。その後、14年には60万台(据え置き型を含む)まで低迷したタイミングで、エスキュービズムが市場に参入するのである。

 大手が撤退していくなかで、なぜ同社はCDプレーヤーをつくることになったのか。「音楽はAIスピーカーで聴くようになったよ」といった人が増えているなかで、どういった人が購入しているのか。エスキュービズムの横町亮介さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

●なぜCDプレーヤーを開発することに?

土肥: ポータブルタイプのCDプレーヤーが売れているそうですね。2014年10月に商品を発売したわけですが、なぜこのタイミングだったのでしょうか?

横町: CDプレーヤーの1号機はソニーが発売したわけですが、そのソニーが撤退したことが大きいですね。他社もCDプレーヤーを販売していたのですが、市場が縮小していたので、次々に撤退していました。そうした状況のなかで、家電量販店のバイヤーさんなどから「CDプレーヤーをつくる会社が少なくなっていまして。どうしたらいいのか」といった声がありました。そこで、当社は「じゃあ、ウチが」と手を挙げてつくることに。

土肥: エスキュービズムは液晶テレビや冷蔵庫などをつくっているわけですが、CDプレーヤーって「じゃあ、とりあえず」といったノリでつくることができるのでしょうか?

横町: 当社はファブレス(工場を持たない)なので、商品の金型からつくったわけではありません。中国で開かれていた家電の金型見本市で、CDプレーヤーの金型があったので、商品化が実現できるかなあと思いました。CDプレーヤーは1982年に発売され、その後技術が大きく変わったわけではありません。それほど難しくないので、私たちのような新興メーカーでも参入できたと思います。

土肥: 家電量販店やディスカウントストアなどで、聞き慣れないメーカーの製品が並んでいますよね。冷蔵庫、トースター、電子レンジなど。大手メーカーが過去に開発した技術や部品があって、それらの特許を侵害しない形でつくっている「ジェネリック家電」がありますよね。このCDプレーヤーもジェネリック家電になるわけですか?

横町: はい。

土肥: 開発はどのような形で進んだのでしょうか?

横町: 最大手だったソニーの商品はどのようなプレーヤーだったのか、どのようなスペックを搭載していたのか。そのスペックに合わせて、設計していきました。次に、付属品をどうすればいいのかという問題があったのですが、バイヤーさんの声を聞いて、必要なモノ、不要なモノを決めていきました。

 開発にあたって、苦労したことはデザイン。技術的なことはほぼ完成しているので、新製品だからといって大幅に変更することは難しい。他社のCDプレーヤーを見ていただければ分かるのですが、性能はだいたい同じ。じゃあ、何が違うのか。当社はデザインを自社で設計するので、その部分にはこだわりました。どういった形がいいのか、どういった色がいいのか。成熟している製品だからこそ、消費者に何が求められているのかを考えながら、つくっていきました。

●市場調査を行わないワケ

土肥: CDプレーヤーを開発するのに、高い技術力はいらない。だから参入障壁が低いという考え方もできるのですが、市場は縮小していますよね。ピーク時に比べて、4分の1以下になっているのにもかかわらず、なぜつくろうと思ったのでしょうか?

横町: 参入することにためらいはありました。ただ、商品が売れなくなっているとは言っても、市場の数パーセントでも手にすることができれば、当社のような新興メーカーであれば十分にやっていけます。

土肥: 商品開発をする前に、市場調査は行ったのでしょうか?

横町: いえ、していません。当社は基本的に、市場調査は行いません。なぜなら、「いいモノが売れるのではなく、売れるモノがいい」といった考え方をしているから。大手家電メーカーの場合、性能にものすごくこだわりますよね。1%の性能をアップさせるために、1年をかけて……といった感じで。そうすると、これだけの経費がかかったので、これだけ売れないと採算がとれない、といった考え方にならざるを得ません。

 ほとんどの会社はそのような形で商売をされていると思うのですが、当社の場合は違う。市場調査を行わず、とりあえずつくってみる。最小限の数をつくって、まずは市場の反応を見る。できるだけ不要な在庫を抱えずにスタートして、売れるか売れないか、その結果を見て、次を考えるといった流れなんです。

土肥: 繰り返しになりますが、CDプレーヤーは売れなくなっていますよね。縮小している市場を調査せずに、とりあえず参入って……大胆というか、なんというか。

横町: そもそもニッチな市場なので、調査をしてもよく分からないんですよね。CDプレーヤーっていりますか? と聞いても、「うーん、どうかな」「いらない」と答える人が多いのではないでしょうか。じゃあ、CDプレーヤーを使っている人は、これからも使いたいと思っているのか。よく分からないんですよね。使っている人が少ないので、そうした人に調査することが難しい。

 というわけで、CDプレーヤーがなくて困っている人がいれば、じゃあ、当社でつくってみようといったスタンスなんです。でも、困っている人がそれほどいなければ、商品は売れません。そうした場合は、撤退します。先ほども言いましたが、「いいモノが売れるのではなく、売れるモノがいい」という考え方でやっています。

●どんな人が購入しているのか

土肥: 発売当初、どのような反響があったのでしょうか。

横町: 先ほど「最小限の数をつくって、まずは市場の反応を見る」と申し上げましたが、CDプレーヤーの場合、5000台をつくりました。発売したところ、すぐに完売したので「需要はあったんだ」「困っている人がいたんだ」ということが分かったので、継続している販売することに。

土肥: どんな人が購入しているのでしょうか?

横町: CDプレーヤーが登場した当時、どのような人たちが購入していたのか。いまでいうと、iPhone XやAIスピーカーなど新しいガジェットが好きな人だったと思うんです。そうした人たちは、iPodが登場したときには、すぐにiPodを購入していたのではないでしょうか。その一方で、CDプレーヤーは売れなくなっていき、「オワコンでしょ」とまで言われるようになりました。でも、実は違う。購入している層は変化しているんですよね。いま、CDプレーヤーを使っているのは、高齢者と若年層が多いんです。

土肥: それはなぜ?

横町: 「CDが売れなくなった」「音楽はCDで聴かない」という人が増えている、といったデータがありますが、高齢者はCDを購入しています。新聞通販を運営している会社に演歌のCDと当社のCDプレーヤーをセットで販売していただいているのですが、ものすごく売れています。

 高齢者がCDを聴いていることはなんとなくイメージできたかもしれませんが、なぜ若い人たちがCDプレーヤーを購入しているのか。勉強のために使っているケースが多いんです。例えば、英語のテキストにCDが付いていた場合、それを聴くのにどうすればいいのか。かつては「PCで……」という人が多かったかもしれませんが、いまのノートPCでCDドライブ付きのモノって少なくなりましたよね。そうした背景があって、勉強するためにCDプレーヤーを購入する人が多いことが分かってきました。

●“隙間”を見つけていかなければいけない

土肥: CDプレーヤーはとりあえずつくってみて、売れたわけですよね。成功事例のひとつだと思うのですが、逆につくってみたものの失敗したケースもあるのではないでしょうか?

横町: あります。例えば、過熱調理ができたり、真空調理ができたり、1台で6役をこなすクッキングミキサーを販売しました。たくさんのメディアで取り上げていただいたのですが、思ったより売れませんでした。なぜ、売れなかったのか。このミキサーを使えば、豚の角煮をつくることができるのですが、ミキサーを使って豚の角煮をつくろうと思う人はどのくらいいたのか。実際、購入した人から「使い方がよく分からない」という声がたくさんありました。

土肥: クッキングミキサーを開発する際も、市場調査は行わなかったのでしょうか?

横町: 実は、たくさんの人に声を聞きました。どんなミキサーがほしいですか? と聞いたところ「こんな機能がほしい」「あんな機能がほしい」といった意見がたくさんありました。考えてみると、いろいろな機能が付いているほうがいいですよね。ないよりはあったほうがいいわけですから。で、さまざまな機能を搭載したのですが、売れませんでした。

土肥: 質問に答えた人は「あれも、それも、これも、あったほうがいい」と言ったわけですが、実際に使うかどうは全く別だったわけですね。

横町: はい。こうした失敗を繰り返したことで、「消費者が絶対に必要と感じているモノだけ提供していこう」という考え方に変わりました。CDプレーヤーの場合、あったらいいねの商品だったのか、なければいけない商品だったのか。販売してみて「なければいけない商品」であることが分かってきました。

 世の中には、たくさんの商品が溢れています。家電量販店に行くと、さまざまな商品が並んでいますが、“隙間”は必ずあるんですよね。私たちのような新興メーカーでも入っていける隙間が必ずあるので、今後もそれを見つけて、必要としている人に商品を届けなければいけません。

(終わり)

コメント数 24 *複数のAPIを使いコメント保存しています。

apc***** 2017-12-13 08:57:55

確かにシンプルなプレーヤーは
少なからず需要は有ると思います。
ハイスペックな製品ばかりだと疲れます。


cav***** 2017-12-13 09:07:49

数十万円もするプレイヤーは私じゃ音の違いがわからない。


※※※ 2017-12-13 14:37:15

お店で展示されているものを大きい音で聴けば、高いスピーカーは違うなーとか素人の自分でも思うけど、
自宅で聴く分には高性能である必要はあまりないですよね。


shl***** 2017-12-13 08:59:35

ソニーのポータブルCDを何機種か持ってますが、年代の古い
モデルの方が音が良い!利益が取れないから高品質機を出せなかったのですね。


sen***** 2017-12-13 09:41:25

鉄の塊みたいなSONYの黒いディスクマンだったか、持ってた。ものすごく音が良かったし、ピックアップ周りとか頑丈な作りしていたけど、板金が反ってしまってディスクに傷をつけるようになってしまい、捨てた。
でも、あのクオリティの物はすぐに売られなくなった。


がめら 2017-12-13 09:05:22

*このコメントは削除されました。


kcw***** 2017-12-13 09:24:23

カセットテープが、さらに高齢層で売れ続けているのと同じ。20年後にはiPhoneがオワコンになって、同じことが起きるよ。


あかんたれ 2017-12-13 09:11:39

1年ほど前、それまで長年使っていたポータブルCD(CDウォークマン)がついに壊れたので買い替えようって思って探したけど大手メーカーはもう作ってないんだね。あきらめた。


hdc***** 2017-12-13 09:12:33

イオンの格安プレイヤーがあった様な気がする。CDプレイヤーあれば確かに便利かな。使用頻度知れてるけども。iTunesでCDR作成して車で使うんだよな。まぁ、YouTubeで音楽聴いてるからねぇ。角松の古い曲ばかり。


kaz***** 2017-12-13 09:17:17

確かに原価は1500円程とも言われるので、全部外注だったら商売として有りだよなぁ。
しかし…85年にミニコンポに繋ぐ、据え置きプレーヤー単体を5万で買った身としては、技術の進歩や価格の下落に時代を感じ過ぎて、ちょっと切ない…


me0***** 2017-12-13 09:18:44

86年にソニーから出た2代目のポータブルCDプレーヤーD-50mark2を買ったけど、アルカリ乾電池が高い時代で8本だったかな!
新品をプレーヤーに入れてCDアルバムを2枚聴いたら電池切れになった!( ̄◇ ̄;)
時間にして2時間くらい!とても携帯出来るレベルの商品じゃ無かったですね!( ̄Д ̄)ノ
結局ACアダプタ(其れも別売り)をわざわざ買って使ってました!(ーー;)


mt2***** 2017-12-13 09:26:50

Blu-rayプレーヤー販売しないかなー?Blu-rayのサントラ聴けるの欲しいなー


chi***** 2017-12-13 09:32:20

ついに、演歌好きの高齢者もカセットテープからCDが主流の時代に変わったのか。感慨深い。
しかしCDプレーヤーの金型はあってもMDプレーヤーの金型はないんだろうなあ。ほとんど日本だけの市場だったろうし。


tis***** 2017-12-13 09:41:48

MDプレイヤーが出た頃には、MP3プレイヤーがもうあり、訳が分からない韓国や台湾の企業がそれに乗っかっていて、ネットをやっている層だとMDの必要性を感じていませんでしたからね。

まさが、大手のアップルが入り込んで今のようになるとは誰も思っていなかったかも。


tam***** 2017-12-13 09:34:45

私が、CDプレーヤー始めて買ったのは、83年春でした。SONYが発売した2台目CDP-702ESで、26万でした。以来、5〜6台機種変更して、現在、OPPO205ユニバーサルプレーヤーで、楽しんでいます。PCオーディオや、ストリーミングでも、聴いていますが、CDやSACDも、良い音します。やめられません。


※※※ 2017-12-13 14:41:56

今、CDプレイヤーを地味に欲しいなって思っている自分がいる。
小さいラジカセを買おうかとも思っている。
昔のカセットテープとか聴きたいんだよねーw


愚かな自分に知恵をください 2017-12-13 16:45:37

年末の掃除をしていたら、MDが多量に出てきた……
コンポももうないし、どうしましょう。
プレイヤー売ってるかな。


ota***** 2017-12-13 09:51:23

ソニーが高級路線でもう一度生産してくれることをちょっと期待してる。


TOKYO14channel 2017-12-13 11:10:13

ハイレゾウォークマンのデジタルアンプを搭載して、CD音源をアップコンバート。しかもWM1みたくインゴット削り出しで激重(笑)
ソニーが本気を出したら面白い製品ができそうだ。


ota***** 2017-12-13 12:12:35

TOKYO14channel>

そういうモデルを期待してるんですよ。


第100代記念総理 池田大作 2017-12-13 09:49:32

CD10枚聞いても一日電池が持つなら欲しい


mkg***** 2017-12-14 03:35:40

発想が素晴らしい。一度手にして見て見たい。


カクベエ 2017-12-13 22:21:49

最先端の製品を販売するのでは、お客様が使い方を理解出来ない可能性があるから、ニーズに応えて販売するという事でしょうか。ビジネスを変えるという意味合いですね。

私の場合は、音楽を聴く時はノートパソコンかウォークマン(NW-S14 / 2014年製)のどちらかですね。CDを再生して聴く機会は余りありません。しかしCDはたまに買うことがあり、基本的にMy Favorite アーティストの物を買っています。

ただ、このような懐古趣味を目的としてCDプレーヤーを買うのもアリですね。自宅にはTM NETWORKとTRFとSuperflyのベストアルバムがあるので。


tak***** 2017-12-13 11:14:50

CD良いですよ!圧縮音源では聞こえない音が、CDでは聞こえるんです。20年前のケンウッドのアローラが、良い音出してくれます。






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