【2016年 出来事】トランプを支持した「繁栄から取り残された白人たち」の真実

2017-04-01 07:00:02


 アメリカの大統領選挙では、必ず予期しない大きな出来事がある。しかし、2016年の大統領選ほど「前代未聞」という表現が似合う選挙はなかった。トランプの当選である。

 トランプは「とてもひどい」などといった小学校で学ぶ程度の単純な語彙だけを使ってオバマ大統領をけなし、ライバル候補を揶揄し、マイノリティや移民を非難して群衆を湧かせた。

 なぜトランプは支持されたのか? 主な支持層である地方の白人労働者の怒りや不信感の実態を、当事者が初めて語る。



 私は「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼ばれる一帯に位置する、オハイオ州の鉄鋼業の町で貧しい子ども時代を送った。記憶をどれだけさかのぼってみても、当時から現在にいたるまで、その町は、仕事も希望も失われた地方都市であることに変わりはない。

 控えめに言っても、私と両親との関係はかなり複雑だった。一方の親は、私が生まれてからずっと薬物依存症と闘っている。私を育ててくれた祖父母はどちらも高校を卒業しておらず、カレッジを卒業した親類もほとんどいない。

 統計資料によれば、私のような境遇に育った子どもは、運がよければ公的扶助を受けずにすむが、運が悪ければヘロインの過剰摂取で命を落とす。昨年、私の故郷の小さな町で何人もが亡くなったように。

 私自身も、将来に望みのない子どものひとりだった。高校では落第しかけ、この町では誰もが抱く、怒りやいらだちに屈しかけていた――。

 私は1984年の夏の終わり、オハイオ州のミドルタウンで生まれた。この町には製鉄企業「アームコ」があり、祖母がよく言っていたように、「アームコがこの町をつくった」。

 実際、町のまともな公園や施設は、多くがアームコの資金でつくられた。主要な地域組織では、役員にアームコの関係者が名を連ね、アームコは学校に資金援助もしていた。それに、ミドルタウンの住民が何千人も雇用され、私の祖父のように、学校教育を受けていない人でも、かなりの給料をもらっていた。

 1980年代のミドルタウンには、とても美しい自慢の市街地があった。にぎやかなショッピングセンターや、第二次世界大戦前から続くレストランがあり、製鋼所でのきつい一日を終えた祖父のような人たちが集い、ビールを一杯(あるいは何杯も)引っかけられるバーもいくつかあった。

 だが、いまやショッピングセンターのほとんどは空き店舗になっていて、最後に見たときにはハンバーガー店とディスカウント食料品店、バイキング形式の中華料理店があるだけだった。この光景はめずらしいものではない。

 ミドルタウンの市街地は、アメリカの産業の過去の栄光を示す遺物になりはてたのだ。市街地の中心部、つまりセントラル・アヴェニューとメイン・ストリートが交差するところですら、窓ガラスが割られた廃店舗が列をなしている。

 目抜き通りからほど近いところに、ソーグ家の屋敷がある。ソーグ家は19世紀にさかのぼる有力で裕福な一族で、ミドルタウンで大きな製紙工場を経営していた。かなりの額を町に寄付し、地元のオペラハウスには一族にちなんだ名がつけられているほどだ。ミドルタウンがアームコを誘致できるほど立派な町になったのも、ソーグ家のおかげだといえる。

 ソーグ家の屋敷は、文字どおりメイン・ストリートに面している。同じ通り沿いには、その昔、ミドルタウンの全盛期に富裕層が住んでいた、ぜいたくな家がずらりと並んでいるが、そのほとんどが朽ち果てている。いまでも使われている建物といえば、ミドルタウンの最貧困層用に、建物のなかを区切って共同住宅にしたものばかり。

 ここは、かつてはミドルタウンが誇る通りだったが、いまや薬物依存者と売人の待ち合わせ場所になった。暗くなったら近づかないほうがいい。
 
 このような変化は、貧困地域に住む白人労働者階層の数が増加したことによる。1970年には、白人の子どもの25%が、貧困地域に住んでいた。それが2000年には40%にまで上昇した。いまは、ほぼ確実にさらに高くなっているだろう。

 歴代の市長たちは、ミドルタウンの市街地を再生しようと試みてきたが、むなしい努力に終わっている。再生の取り組みは、いつだって無駄な努力だった、と私は思う。人々が去っていくのは、市街地におしゃれな文化的スポットがないからではない。ミドルタウンには、消費者が十分にいないから、おしゃれな文化的スポットのほうが去っていくのだ。ではなぜ、金払いのよい消費者がいないのか。消費者を雇用するだけの仕事がないからだ。

 私は白人にはちがいないが、自分がアメリカ北東部のいわゆる「WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)」に属する人間だと思ったことはない。

 そのかわりに、「スコッツ=アイリッシュ」の家系に属し、大学を卒業せずに労働者階層の一員として働く白人アメリカ人のひとりだと見なしている。そうした人たちにとって、貧困は、代々伝わる伝統といえる。

 先祖は南部の奴隷経済時代に日雇い労働者として働き、その後はシェアクロッパー(物納小作人)、続いて炭鉱労働者になった。近年では、機械工や工場労働者として生計を立てている。

 アメリカ社会では、彼らは「ヒルビリー(田舎者)」「レッドネック(首すじが赤く日焼けした白人労働者)」「ホワイト・トラッシュ(白いゴミ)」と呼ばれている。こうした貧困に沈む白人たちが、トランプ大統領を支持したのだ。



 以上、『ヒルビリー・エレジー~アメリカの繁栄から取り残された白人たち』から引用しました。

コメント数 13 *複数のAPIを使いコメント保存しています。

ant***** 2017-04-01 06:13:03

まともな環境にいてまともな教育を受けたアメリカ人がトランプを支持するとは思えない。


自分の身は自分で 2017-04-01 06:16:47

話半分どころか1/10も実現できずに退陣するでしょう。


******** 2017-04-01 06:18:39

何か演歌が流れてきそうな人生譚だよねえ。アメリカのお話なのに・・・


capitan 2017-04-01 06:46:01

選挙には金がかかる。
結局、メディアを有効に使える大金持ちが当選することになる。
人格や政策よりも、耳障りの良い言葉をより多く大衆に伝えたほうが勝つのだ。
一般大衆はそれほど洗脳されやすい。


yhy***** 2017-04-02 09:43:48

もしかしてトランプは大金持ちだから潤沢な選挙資金を用意できて、そのおかげで選挙に勝てたと思ってる?
ちゃんと調べてみたらマスコミの印象操作で洗脳されやすいバカは自分だって気づくよ!


capitan 2017-04-02 10:50:06

なら、そうじゃない根拠を述べてみろや。
愚か者めが。


bro***** 2017-04-01 07:19:04

だからと言って、他人に八つ当たりをしても
自分の価値が上がるわけでもあるまいに。
人種差別もそうだけど、他人と比較することで
惨めになるだけだから、止められるものなら止めな。


mom***** 2017-04-01 07:38:59

例えば日本でトヨタやマツダがなくなったら
名古屋や広島がこうなってしまうのかな?

そうは思えない、都市として衰退はするだろうけど
ミドルタウンほどの惨状になるとは想像できない。

地方行政システムの違いなのか、
国民の意識の違いなのか、わからないけれど
日本はこのような都市、このようは人々を
作り上げてしまう国にならないことを祈ります。


heii***** 2017-04-01 10:46:02

過疎化は日本でもあるけど一番違うのは薬物依存の割合じゃないかな。


thr***** 2017-04-01 10:51:50

どんな産業でも、改革・革新をしなければ廃れていく典型だろう。製鉄は今や中国が大安売りで世界シェアをしめているが、これは単なる粗鋼であり、高張力鋼鈑等の稀少製品を作る製鉄所はさびれていないぞ。デトロイトの自動車産業しかり、日本やドイツの車は日進月歩しているがアメリカはどうなんだ?弱肉強食が国是のはずのアメリカが、力にものを言わせて保護貿易に走り、ゴリ押ししようとしているが、いづれ世界から猛反発を喰らうぞ。


eri***** 2017-04-01 13:25:04

全世界の人口比率で言うとアジア人がダントツで多いから白人に負ける気がしない


nij***** 2017-04-01 19:13:46

ギャング オブ ニューヨークだなぁ。
ロスでも一番活力のないの白人の貧困層だったもんね。


女子中学生です。 2017-04-02 08:52:28

NOVAの先生や英会話講師は仕事がない貧しい南部出身の低学歴者ばかりだって。






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